「慶さん!」


「ん?」



今日はバイトがないって
言っていたから家にいると思っていた。


あたしの予想通り、慶さんはソファに座ってスマホをいじっていた。



「明日……っ!
紅嵐のみんなが五十嵐さんを問いただすんだって!」



そういいながらスマホを触っている慶さんの顔を覗き込んだ。



「…ふーん」


「行かなくていいの!?」



あたしは見落としてないよ。
さっき、慶さんの瞳が一瞬揺らいだことを。



「俺には関係ねぇし、どうでもいい」


「だって、仲間だったんでしょ?
大事な人なんでしょ?」


「萩花。俺とアイツはもう縁を切ったんだ。
名前もむやみに出すな」



少し強い口調で、まるであたしに言い聞かすように言った。


これ以上言ったらたぶん慶さんは怒ってしまう。


それが分かっていたからあたしは言葉を飲み込んで押し黙った。



「……じゃあ、あたしが代わりに行ってくる」


「…は?」



あたしはこのまま慶さんに
曖昧な気持ちでいてほしくないんだよ。