「照れてんの?可愛いな」


「て、照れてないし!」


「嘘下手なんだよ」



いや、慶さんが鋭すぎるんだよ。
あたしは至って普通だもんね。


会話が自然的に終わったのは目の前から五十嵐さんが歩いてきたから。


あの話を聞いてから五十嵐さんに会うのは初めてだ。


慶さんと五十嵐さんはお互い素直になれてないだけできっとまだ大切な存在には変わりないと思う。


だって、慶さんは五十嵐さんの話をしていた時に本当に切なそうにどこか懐かしそうに話していたし、


五十嵐さんの部屋には慶さんとの写真が飾られていたから。


人はすれ違うけど、やり直そうと思えば何度だってやり直せる。


慶さんも黙り込んで何言わない。


だから、あたしも何も言わずに普通に通り過ぎようとしたのに「ねえ」と話しかけられた。



「は、はい?」



もちろん、慶さんも立ち止まったけど前を向いたままであたしと五十嵐さんは向かい合わせになる。