【完】溺れるほど、愛しくて。




『そっか…』


『おう』



自分のモノにしたい。
そう思わなかったわけじゃない。


ただ、俺は自分の気持ちに気づいたと同時にあることにも気づいてしまったんだ。



『よー、二人とも来てたのか』



ガチャ、と扉が開き何も知らない忍が入ってきて三人で過ごすいつもの時間が訪れる。


そう、コイツ…忍の気持ちにも。


忍は舞花のことが好きだという事を気づいてしまった。


ずっと一緒にいたんだ。
気づくのなんて簡単だった。


でもこんなにも気づきたくないと思ったのは初めてだった。


舞花のことは好きだ。


だけど、同じように俺は忍のことも大切でどちらかを選ぶなんてことできなかった。


だから、俺は自分の気持ちを口にしなかった。
忍と舞花が付き合うならそれでよかったから。


忍なら舞花を幸せにできると分かっていたからだ。


初めての恋がこんなに苦しいなんて知らなかった。


初恋は実らねーっつーのは本当なのかもな。


だけどもし俺がこのとき、違う答えを出していたら未来は変わっていたのかもしれねぇ。