【完】溺れるほど、愛しくて。




『あ、どういたしまして……』



そういうと去っていくのかと思いきや、ずっと立ち尽くしたまま俺たちを見つめている。



『……なに?』



しびれを切らして俺が話かけたら、
ビクッとわかりやすく動揺した女。



『えっと……あの…お二人はどこに行くんですか?』



なんだよ、コイツ。
正直、早くどっかに行ってほしかった。


別に女に興味もなかったし、
女遊びが激しかったのは忍の方だったし。



『紅嵐って暴走族知ってる?』


『あっ…聞いたことはあります』



忍の優しい言葉に少しだけ微笑んだ女。

その笑顔は驚くほど綺麗で一瞬見とれてしまった。


真っ直ぐで綺麗な黒髪が彼女の清楚な雰囲気をよりいっそう際立たせていた。


それは忍も同じようだったようで隣で固まっていた。



『私の顔になにか付いてますか?』



コテン、と首を傾げる仕草さえも女らしさが滲み出ている。



『…いや、なんつーか見とれてた。
んで、俺たちのこと知ってんだ』



すんなりとこうやって思ったことを口に出来るのも忍だけで俺は滅多にそんなこと言わない。