【完】溺れるほど、愛しくて。




『慶の心だって綺麗だろ。
俺の話を真剣に聞いてくれてんだから』


『…そんなこと言ってくれんのお前だけだよ』



俺の心の中は黒いんだ。

親への憎しみが完全に消えたわけじゃないし、誰かに優しく出来るわけじゃない。


人間の出来損ないだと思う。



『なぁ、俺はお前とならできると思うんだ』



覚悟を決めたようにそっと吐き出された言葉。



『…分かったよ』


『ほんとか!?』



嬉しそうに俺の両手を握り、満面の笑みを浮かべる。


なんか、こっちまで笑っちまいそうだ。



『ああ』


『よっしゃ…!
じゃあ、族の名前は何にする?メンバー集めなきゃなんねーよな、あ、でもまだバイクとか乗れねーし……』



楽しそうに、でもどこか切なげに言う五十嵐。


コイツは本当に優しいやつだ。


寂しいヤツらに居場所を作ってやろうとしているんだから。


自分がいろんな複雑な思いをしたからこそできるんだろう。