『親父さんはそれくらいお前のことが
大事だったんじゃねーのか?』
『…え?』
『自分の命捨ててまで守ってくれる人がいて
お前は幸せものだと俺は思うよ』
不謹慎っつーことは重々承知だ。
でも、これは俺の本当の気持ちだった。
俺にはそんな人…いねーし。
お前は愛されてたんだよ、五十嵐。
『……あー、やっぱお前は他の人と言うことがちげぇな』
なんて、おどけたように笑いながら体を起こした。
盗み見た五十嵐の顔は涙でぐしゃぐしゃになっていていつもの整った顔が台無しだった。
だけど、それくらい辛かったんだろうな。
普段はうっとうしいくらい笑ってる人ほど泣かないらしいし。
『それは褒めてんの?』
『うん。
変に同情しねーし、今の言葉で俺は
親父にすげー愛されてたんだって分かったよ』
『お前は…俺とは似てねーよ。
だってお前の心はすげー綺麗だ』
喧嘩をする意味だって知ってる。
俺はそれを知らなかった。
ダメだと叱る大人もいなかった。
でも、五十嵐は違う。
ダメなことはダメだと
教えてくれる大人がいたんだ。



