【完】溺れるほど、愛しくて。




『…うっせぇ』


『なー、慶』


『名前で呼ぶなよ、馴れ馴れしい』



とは言いつつ、内心はコイツとの距離が縮まった気がしてすげー嬉しかった。



『とか言って嬉しいくせに。
ニヤけてんぞー』


『マジ黙れ』



俺にもこんなに感情がまだ残っていたんだ…
すべてをあの日に捨てたつもりだったのに。


嬉しいとか悲しいとか…
そんなの感情なんてあっても自分が傷つくだけだと思っていた。


だけど、その感情が再び芽生え始めている。



『まあまあ、俺の話を聞けって』


『5秒で済ませよ』


『は!?5秒で!?無理だろお前…!』


『はい、終了』



こうしてコイツといるのも悪くねーな。
そう思っている自分がいることにも驚いた。



『はぁ…お前ってやつは…』


『んで、なんだよ』



一人、俺に呆れている五十嵐は
置いといて本題に戻すように言った。



『俺と……族作んねー?』



さっきまでとは明らかに違う、
真剣な声と決意の固まっている瞳。