「萩花?」
「入らない」
「なんで?」
「入りたくないから」
慶さんだって本当は気づいてるんでしょ?
あたしが葛城舞花の妹だってことくらい。
五十嵐さんでも気づくんだから勘の鋭い慶さんなら気づいて当然。
「ワガママ言ってねーで入れ」
少し強い口調で言うと、体を反転させてあたしの前から去ろうとする。
だから、あたしは後ろから抱きしめて慶さんの動きを制させた。
もう頭がぐちゃぐちゃだよ…
あたしは慶さんの彼女なのに
何も知らないなんて…やだよ…。
「……今日は甘えてもダメだ」
「甘えてなんかない」
「じゃあ、なんなんだよ」
慶さんは怒っている。
それはいつもよりも
はるかに強い口調と雰囲気でわかる。
「もういい加減、隠すのはやめてよ…っ!」
「…」
慶さんの体に入っていた力が一気に抜けた。