不穏な空気が漂っているこの街に入ってしまったら
もう二度と出られないような気がして、吸い込まれてしまいそうになる。
少し歩き進めると、たくさんの建物が並んだところまできた。
ここには普通に人が住んでいるらしいけど、あんまり外に出ることはないんだって。
外に出たら何があるかわからないから。
そんなことを聞くとこれからあたしの身に何があるかなんて分からないなって思う。
「お前……何でまたいるんだよ」
「あっ」
声がして後ろを振り返ると怪訝そうな表情を浮かべて会いたかった赤髪の彼が立っていた。
会いたくて忘れられなくて、ずっと会えることを望んでいた。
名前も知らないのに…忘れられなくなるなんて…。
「ねぇ、この女だれ?」
だけど、彼の後ろからひょこっと顔を覗かせたのは綺麗にメイクをした金髪の女の人だった。