「自分でもおかしいなって思ってますけど
でも、慶さんになら泣かされてもいいです」
「キミはアイツのことを何も…」
「まだまだ知らないことばっかりです。
だけど、慶さんはあたしを見捨てなかったから」
本当なら見捨ててもおかしくなかった。
最初出会ったときだって知らない男の人に襲われそうになったけど助けてくれて、
ほぼ他人のあたしを家に引き入れてくれたし、
家に連れて帰られた時だってあのまま放っておくことだってできたのに慶さんはそれをしなかった。
「それは同情だよ。いつか分かる。
アイツはキミのことを本気で好きじゃない」
「あたしは……っ、信じてますから」
彼の横を通り過ぎようとしたらガシッと掴まれた。
「信じてても、裏切られるときは一瞬だ」
切なげに俯きながらさっきよりも弱々しく吐き捨てた彼は、きっと裏切られたことがある人なんだろうな…と直感的に思った。