狭間さんに見送られながらあたしは彼のいるであろう“Black City“へと向かう。


きっと、狭間さんはあたしがどこへ向かうかなんて気づいていると思う。


だけど、何を言わないのは彼の優しさなのだと思い知った。



「……着いた」



目の前に広がる光景は真っ暗だ。


まだ、夕方なのにオレンジ色の光は一切なくて黒い闇の中で薄気味悪い空気が漂っているだけ。


また、この前みたいなことがあるかもしれない。


というか、きっとあんなのは日常茶飯事なんだと思う。


だけど、もう一度だけ…彼に会いたい。


初めてあった時から忘れられなかった彼に。


ここに入れば、あたしは無事に家に帰れないかもしれない。


それでもいいから……会いたいの。


そう思うのに足はなかなか一歩を踏み出せない。


怖い…恐怖は襲ってくるけど不思議と“帰りたい”とは思わない。


帰っても家族は誰もいないし、一人ぼっちで寂しい思いをしなきゃいけないことがすでに分かっているからだ。


あたしは覚悟を決めて、
“Black City“へと続く第一歩を踏み出した。