バタン、と扉が閉まる音がしたらすぐに「はぁ…」と深いため息を零す。


お母さんだってうそをついているんだからお互い様だと思っている。


何かあって連絡してもお母さんのスマホには繋がらない。


あたしからの連絡なんて気づかないくせに調子のいいことばっかり言わないでよ。と心の中で口には出せない思いを吐き出す。


お母さんは仕事の量を減らして毎日病院で看病をしている。


誰の看病かというとあたしのお姉ちゃんで交通事故で重体になって入院中の葛城舞花(まいか)だ。


お姉ちゃんは優しくて礼儀もあるし、それに加えて優秀で誰からも愛されるようなタイプの人で


こんなあたしにも優しくしてくれて本当に心の底から尊敬できる人。


もちろん、お父さんの会社の跡取りはお姉ちゃんだった…


でも去年お姉ちゃんは交通事故に巻き込まれて跡取りがあたしへと変わってしまったのだ。


期待されるのは好きじゃない。

その期待に応えられないのをあたしはもう分かっているから…お姉ちゃんなんて超えられないのを知っているから。


あたしもお姉ちゃんが大好きだから早く良くなってほしい。
だけど、お母さんとお父さんを独り占めしないで…