「うるさいなぁ!早く出てよ!」


「はいはい」



むぅ…絶対バカにしてるし。
なんでいつもあたしばっかりドキドキしなきゃいけないの!


慶さんもヘルメットを被り、ブルルルルンッと大きな音を立てながらバイクは進み始めた。


うるさ!こんなの近所迷惑じゃない!?
と思ったけど、案外誰も気にしていなさそう。


頬を撫でる風が心地よくてバイクも悪くないな、と思った。


それに怖いと思わないのは慶さんに乗せてもらっているから。


風に当たるたびに慶さんの香水の匂いがあたしの鼻をくすぐる。


出会った時に香った女の人の香水の匂いじゃなくて、慶さんが選んだセンスのいいあたしの大好きな匂い。


もちろん、香水をつけてない慶さんも大好きだけどね。


なんていったら、慶さんは『ほんと俺のこと好きだよな』って言って笑うんだろうなぁ。



仕方ないよね、好きなんだもん。