【完】溺れるほど、愛しくて。




「ふふっ…慶さん、会いたかったよ」


「俺は別に会いたくなかった」



そっぽを向いているくせにあたしを抱きしめる力は緩めないところにまた好きが募る。



「じゃあ、なんで来てくれたの?」


「どっかの誰かさんが【誰か私をさらって】なんてバカみてぇなこと書いてたから来てやった」


「まさか…アレ見たの?」



夕方、公園に書いたあの落書きを。



「ああ。たまたまな。
あんなところに書くとかやっぱガキだわ。
変なやつにさらわれたらどーすんの?」


「そ、それは…」



文字だけだし、住所も個人情報なんて
一つも書いてないから大丈夫でしょ?


「だから…」


「え?」



慶さんは何かを決意したような表情をして
あたしの両肩をぐっと掴んだ。



「俺がお前をさらってやる。
後悔はさせないから黙って俺についてこい」



彼の瞳はしっかりとあたしを捉えて離さない。
その言葉にあたしはコクリと一度だけ深く頷いた。