【完】溺れるほど、愛しくて。




「うん…ごめんなさい」



それだけ言うとあたしは逃げるように自分の部屋へと逃げ込んだ。
バタン…と扉が閉まる音が部屋に響き、あたしはカバンを投げ捨ててベッドにダイブした。



「はぁ……自由が欲しい。
誰か、あたしをさらって……」



ぽつり、と静かに心の奥底に秘めていた本音を吐き出すけど、それは暗い部屋の闇の中に消えていった。


誰にも邪魔されないような自由が欲しい。
管理されて生きるんじゃなくて、自分の力で道を切り開いて生きていきたい。


そりゃあ、お母さんやお父さんには感謝してる。


ここまで育ててくれているし、仕事が忙しくてもあたしのことを気にかけてくれているのは身に染みてわかるけど、それが今では窮屈なんだ。


そっと、目を閉じると頭の中に浮かぶのはさっきと彼のこと。
どうして彼はあんなに冷たい瞳をしていたんだろう…


たぶん、彼はあたしのことなんて助けるつもりはなかったんだと思う。


だって、助けるならもっと早くに助けているだろうから。


だけど、結局助けてくれた彼は本当は優しい人なのかもしれない。


それにしても…綺麗な顔だった。
思い出すだけで、トクントクンと鼓動が速くなり心地いいリズムを刻み始める。


もう一度…どこかで会えたらいいな。
なんて、叶いもしない願い事をする。