「私とは、タイプも違う感じだった」

「小春……」

掛ける言葉も見つからないのだろう。ふたりが困った顔で私を見つめている。

気持ちを切り替えるように、私は意識して明るい声を上げた。

「よし、今日は食べよう。ふたりとも、付き合ってよね」





パクパク。次から次へと食べ物を口に運ぶ私を、きょんちゃんと結衣ちゃんが呆然とした顔で見つめている。

「小春、お腹大丈夫?」

「え、大丈夫だけど? それよりも、ふたりとも減ってないよね。しっかり食べて元取らなきゃ」

「でも、小春ちゃん。食べるペース早くない?」

「そんなことないよ。ふたりが遅いだけじゃない?」

口ではそう言っても、自分でもペースが早いのはわかってる。

間違いなく、これはヤケ食いだ。

さっきの篠田さんと女の人の姿が、脳裏に焼きついて離れない。

考えないようにと思えば思うほど、鮮明に頭に浮かんでしまう。

私は大きくかぶりを振って、きょんちゃんと結衣ちゃんに笑顔を向けた。

「私がこんな顔してたら、せっかくの料理が楽しめないよね。ごめんね」

「何言ってるの。あんなシーン見ちゃったら、小春が混乱する気持ちはわかるよ。もちろん、食に走っちゃう気持ちもね」

私に気を遣わせないようにしているのだろう、冗談めいた口調できょんちゃんが笑うと、横に座る結衣ちゃんもフワリと笑った。

「でもさ、篠田さんもひどいと思わない? 有村さんには彼女はいないみたいなこと言ってたのに、ちゃーんといるんだから」

「小春、それはまだわからないよ」

「そうだよ、小春ちゃん。お友達かも知れないじゃない」

「ふたりの言うこともわかるけど。でも、でもね……」

私は気持ちを落ち着けるように、ゆっくりと手に持っていたお箸を置く。

「篠田さんのあんな顔、見たことなかったの」

隣の席で仕事をしてきて、篠田さんの表情は色々見てきたつもり。

元々あまり愛想がない人だから表情豊かな人ではないけれど、通常通りの顔と嫌そうな顔の区別はつくし、わかりにくいけどうれしそうな顔も見たことがある。

でも、さっきの女の人といたときの、はっきりと笑った顔は、見たことなかったから。

「……きっと、あんな笑顔見せられるくらい、あの人には心を許せてるんだよ」

「小春……」