「特にすることないから行こうかなって思ってただけだもん。小春ちゃんときょんちゃんと、美味しいランチ食べたほうが楽しいに決まってるじゃない」
ニコニコと笑顔を見せる結衣ちゃんの横で、きょんちゃんが笑う。
「松嶋くんも、これくらいわかりやすく誘えばいいのにね」
「確かに」
昨日の松嶋くんの、回りくどいお誘いの風景が頭に浮かんでしまって、私もついつい笑ってしまうと、結衣ちゃんが不思議そうな顔をして首を傾げる。
「松嶋くんがどうかした?」
「別に」
「なんでもないよ。さ、行こっか」
相変わらず頭にハテナマークを浮かべた結衣ちゃんの腕を引っ張り、私たちはランチビュッフェの出来るレストランへと行くべく、エレベーターホールへと向かった。
「ね、何食べる? 私、ローストビーフは絶対に食べたいの」
「確かに。オススメってネットにも載ってた。後、天ぷらもその場で揚げてもらえるんだって」
「デザートも豊富みたいだよ。ちゃんと胃袋空けておかなくちゃ」
他愛のない話をしながらエレベーターを待っていると、到着を告げるランプが点灯した。
私たちの待っている場所から一番離れていたエレベーターが到着したので、少し早足でその場へ急ぐ。
扉が開き、出てきた人を見た瞬間、思わず私は俯いて顔を隠した。
「ちょっと待ってよ、あっちゃんってば」
編み込みをした髪をハーフアップにまとめた、可愛らしい女の人が、笑いながら隣の男性の腕に自分の腕を絡めている。
「引っ付くなよ」
口では嫌がりながらもその腕をのける様子もないその人は、間違いなく篠田さんだ。
「小春ちゃん、どうしたの?」
入社して二ヶ月。まだ新入社員の私たちは、社内の人全員の顔を覚えているわけではない。
それは結衣ちゃんもきょんちゃんも同じで、あまり関わりのない篠田さんの顔は、まだ覚えていないようだった。
エレベーターに乗り込み、扉が閉まった後、私は俯いたまま口を開く。
「さっき、エレベーターから降りてきたカップル。男の人がね、篠田さんなの」
「篠田さんって、小春の好きな先輩?」
コクン、と首を縦に振ると、ふたりが息をのむ気配が感じられた。
「さっきの人、キレイな人だったね」
「それは、そうだけど……」
ニコニコと笑顔を見せる結衣ちゃんの横で、きょんちゃんが笑う。
「松嶋くんも、これくらいわかりやすく誘えばいいのにね」
「確かに」
昨日の松嶋くんの、回りくどいお誘いの風景が頭に浮かんでしまって、私もついつい笑ってしまうと、結衣ちゃんが不思議そうな顔をして首を傾げる。
「松嶋くんがどうかした?」
「別に」
「なんでもないよ。さ、行こっか」
相変わらず頭にハテナマークを浮かべた結衣ちゃんの腕を引っ張り、私たちはランチビュッフェの出来るレストランへと行くべく、エレベーターホールへと向かった。
「ね、何食べる? 私、ローストビーフは絶対に食べたいの」
「確かに。オススメってネットにも載ってた。後、天ぷらもその場で揚げてもらえるんだって」
「デザートも豊富みたいだよ。ちゃんと胃袋空けておかなくちゃ」
他愛のない話をしながらエレベーターを待っていると、到着を告げるランプが点灯した。
私たちの待っている場所から一番離れていたエレベーターが到着したので、少し早足でその場へ急ぐ。
扉が開き、出てきた人を見た瞬間、思わず私は俯いて顔を隠した。
「ちょっと待ってよ、あっちゃんってば」
編み込みをした髪をハーフアップにまとめた、可愛らしい女の人が、笑いながら隣の男性の腕に自分の腕を絡めている。
「引っ付くなよ」
口では嫌がりながらもその腕をのける様子もないその人は、間違いなく篠田さんだ。
「小春ちゃん、どうしたの?」
入社して二ヶ月。まだ新入社員の私たちは、社内の人全員の顔を覚えているわけではない。
それは結衣ちゃんもきょんちゃんも同じで、あまり関わりのない篠田さんの顔は、まだ覚えていないようだった。
エレベーターに乗り込み、扉が閉まった後、私は俯いたまま口を開く。
「さっき、エレベーターから降りてきたカップル。男の人がね、篠田さんなの」
「篠田さんって、小春の好きな先輩?」
コクン、と首を縦に振ると、ふたりが息をのむ気配が感じられた。
「さっきの人、キレイな人だったね」
「それは、そうだけど……」


