涙の、もっと奥のほう。

その写真は勉強机の前のコルクボードの真ん中に貼付けてある。

琢磨叔父さん…つまりお母さんの弟にあたる人はこの写真を見ていつも『懐かしい、これぞ俺の姉貴』そう言う。

そんな事を思い出していたら、押し入れを家捜ししたい気分になった。

押し入れのものを一つ一つのけて、一番奥の大きなダンボールを二つ引きずりだした。

二つともたいがいがお母さんの学生時代の写真か私の赤ちゃんのときの写真。

知っていてもなかなか全部見る気にはなれなくて、いつも中途半端だった。

「…お母さん、バンドやってたんだあ…」

思わずそう呟いてしまった写真の中で、お母さんはベースをひきながら笑っている。

『一日限りの伝説のバンド』

写真の下のコメント欄にはそう書かれていた。