「龍奈、帰ろうよ」

親友の可奈の声に我に帰った。

「あ、うん」

自転車置場からは可奈の自転車に二人乗りで帰る。

小学生からの仲良しで、可奈は私をよく知ってる。

「可奈あ」
「うん何い??」

自転車を漕ぐ可奈の後ろ姿に私は話しかける。

「私さっきね、凄い不思議な体験したんだ」
「うそ、どうしたの??」
「お母さんの声、聞いた」

私の言葉の後、可奈は自転車を止めて振り返った。

「本当だよ。『今夜、会いにいくよ』ってお母さん言ってたの」

信じてもらえないだろうな、そんな気持ちは大前提。

だけど私は誰かに話したかった。

「龍奈のお母さんって、あんたが子供のころに亡くなったお母さん??」
「そうだよ」
「よかったじゃん!」

肩越しに可奈が笑った。