涙の、もっと奥のほう。

次の瞬間、私がぱっと目を開けると、写真に写っていた女の人と目が合った。

みるみる内に涙が溢れてくる。

紛れも無い…目の前にいるのは私のお母さんだった。

写真より鮮明で、存在感がある。

お母さんは笑いながら、泣いていた。

「龍奈、久しぶりね。大きく…大きくなったね…」

お母さんの声はハスキーで、とても耳に心地よい。

「お母さん、会いたかった」

泣きじゃくりながら、私はお母さんに抱き着いた。

覚えている、この匂い…色褪せて遠く置き去りにしてきていた記憶の一つが戻ってきた。

お母さんの匂い…煙草の匂いの後から洗濯洗剤のいい匂いがしていて、幼かった私はいつもこの匂いで落ち着いた。