涙の、もっと奥のほう。

見ていて笑顔になる写真、自分の親の考えている事を疑ってしまうような写真…お母さんの青春時代が一つ目の箱には詰め込まれていた。

二つ目の箱に手をかけようとした時、携帯が鳴った。

クラスメイトの時弥からの電話。

「はい、どうしたあ?」

ダンボールの蓋を一度閉めながら電話に出る。

『龍奈、ちょっとでてこいよ』

電話の後ろから聞こえる単車の音が、なぜか窓の外からも聞こえてくる。

「なにしにきたの?」

あえて冷たく答えた。

『ちょっと走りに行こうぜ』

時弥お得意の台詞が予想していた通りに飛んでくる。

無免許運転で走り回る事に対して、時弥は何の抵抗もない。