「君は何を目指してるの?」


考え込んだ君は、やっぱり分からないと首を振る


「方向性も目標も何もない。ただただ、話をもらうままにライブをしてきただけで目の前のイベントが終われば私には何も残ってない。」

「楽しかったからそれでもいいと思ってた。けど…、」


言葉を切った君の呼吸のリズムはやっぱり心地よくてこんな時でも僕は君の唇を盗み見た


「これからお金をもらって歌うようになったらそれじゃダメだと思って、そしたら怖くなって分からなくなっちゃった。」


台風の余韻を残した強い風がザワザワと周りの木を揺らす

それに負けないくらい大きな声でセミが鳴き続けていた


「とりあえず、やめないでよ。」


安っぽい言葉しか出ない自分が嫌になる

君が欲しい言葉を僕はあげられない


「ゆっくり探してみるのもいいんじゃないかな?」


君は深く項垂れた

焦ってる人間に焦るなと言って落ち着けるわけが無いのだ

分かってて言う僕はだいぶ酷だ