私に片想いの魔法が掛かった。
それは解けることを知らない。

「先生!此処の問題なんですけれど……」
「中世の貴族に関する問題ですか……。川上さんは此処が苦手なんですか?」
「えぇ。どうも苦手です……」
「そうですか。では解説しましょう。此の時代では……」

心地よい声音が耳元で響く。

最初は些細な事が純粋に好きだった。
それが少しずつ恋心に変わって行く。

分かりやすい授業が好きだ。
生徒想いな所が好きだ。
低めの声が好きだ。
何処か不器用な所が好きだ。

でも、先生との間なんて埋まらない。
“先生と生徒”の関係から、進むことなんて無い。

だから、魔法は解けない。