ショッピングモールにお盆休みはない。
当然、そのインフォメーションカウンターで働いてるワタクシも同様だ。
落とし物やら館内案内やらで、狭い中で皆慌ただしい。

「ゆかりー!先に休憩入って!」
「わかった!」

後半の戦力を考え、早めに休憩を回すことになり、あたしは手早く荷物を持ってバックヤードに入った。
さすが、連休。
家族連れやらカップルやらがひっきりなしにやってきた。
ずっと対応していたので、喉がカラカラだ。
マイボトルを取り出そうとしたとき、スマホの画面が点滅した。
新着メッセージの窓に、嫌な名前が表示される。

「・・・うげぇ・・・」

品のある制服に反する声が思わず漏れる。
数秒間、考えたのち「よし、見なかったことにしよう」とひとりごちた。

そんなあたしの考えを読み取ったかのように、今度は着信となって知らせてきた。

とる?

とらない??


「・・・・・・・・なんか用?」
「おせーよ、今、休憩入っただろ?」
「は?なんで知ってんのよ」
「さっきまでインフォ近くにいたから。お前全然気づかねーのな」
嘲笑しているのが、電話越しでもありありと伝わってくる。
この男は・・・ほんと!腹立つ!!

「生憎、どっかの誰かと違って、あたしはリーダーで忙しいんで!」
「あーそういや先月からリーダーになったんだったな。オメデトー」
「うるさい!バカいお!用がないなら、電話切るわよ!」

そうだ。貴重な休憩時間を消耗されてたまるもんか。

「今日早番だろ?ちょっと付き合え」
「は?どこに?」
「終わるころに迎えに行くから。じゃ、頑張れよ紫」
「ちょ?いお??伊織っ?」

言うだけ言って、もう【通話終了】になった。

「ほんと・・・わがままでジコチューなんだからっ!!バカいおぉぉぉ!!」


こんな男がいお・・・もとい、伊織といって、あたしの幼なじみであり、
認めたくないけど、【好きな人】なのである。