「……という、話なんだけど、どうかな」
 
 話し終えた作家に、編集者がふうん、という顔をした。

「先生、いよいよ私小説をお書きになるんですね。新機軸だなあ」

「失礼だな。こんなやつ、僕じゃないよ」

「まだ、案はありますか?」

「三つ四つ、書いているものと、構想中のものがある」

「今さっき、おっしゃっていた作品ですが、固まれば面白いかもしれませんね。
 題名は、考えていらっしゃいますか?」

「うん、この作品の題は……」





「『僕が小説を書くように』」

                  <完>