そうだ、こんな風に笑ってたなと美雨は思い出していた。

小学生の時の塾では、羽鳥は最上位クラスでいつも何人かの友達と戯れていた。塾内クラス分けテストの度、二番手クラスに落ちたりまた上がったりで落ち着かない毎日を過ごしていた美雨には、『トップクラスの中心人物』の1人と認識されていた。

だから、中学の入学式でもらった学年名簿に羽鳥の名前を見つけてギョッとしたのを覚えている。それから投げやりな態度で過ごしている姿を見かけて、無理もないけど別人みたいだと思っていた。いつの間にか慣れてしまって忘れていたのだが。




その後も沙織が羽鳥を引っ張って行き、誰かの保護者に写真を撮ってもらっている。

そうだった。もともとこんな風に、外から見てる感じだったと思い出す。

美雨とはちょっと距離のある中心グループ。羽鳥はその気になればすぐ、あっち側の人になれるんだ。

これはきっと、今日だけのことじゃない。

羽鳥が、美雨には超えられない壁を軽々と超えて行った気がした。飛ぶように軽く、その気になりさえすれば一瞬で。



羽鳥がこちらを見た気がして、急いで目をそらす。

係の仕事をしよう。そう気づいて周りを見ると、同じく道具係の山根が「すごかったね、羽鳥」と写真を撮る集団を見ていた。

「声かけないの? 羽鳥と仲良いでしょ」

「え?」と聞き返したときにはもう、山根は「疲れてるよなあ、こっちも」と別のことを呟いた。

「裏方の俺たちもがんばろうぜー」

頑張るには気の抜けた声で言うと歩き出す。「片付け、がんばろう!」と美雨もから元気を出して言った。