「何をやってもうまく行くとしたら、何がしたい?」

「金持ちになりたい」

これを考えてきたんだろう、羽鳥は淀みなく答える。

「金持ちになってどうする?その金でなにをするのか、直接それを頼んでくれないか」

「金持ちになって、ごちゃごちゃ言われずに好きにやりたい」

「ごちゃごちゃとはなんだ」

「勉強しろとか、将来がどうとか、なんかいろいろ」

「何も言われないで育児放棄ってやつをしてほしいんだな」

「いや、飯とかは欲しいけど、ほっといてほしい。話しかけるなって言いたい」

羽鳥の言葉に、どくん、と自分の心臓が鳴った音を美雨は聞いた。


「なるほど、なかなか思春期らしい回答だ。でも、心からの答えとは言えない。遠い将来のことは子どもには難しい。今したいことを考えてごらん」

「今?だから、親にごちゃごちゃ言われたくない」

「ごちゃごちゃ言われないとしたら、今、何がしたい?」

予定していた流れでないらしく、羽鳥が少し詰まった。