「いつもは右じゃなかった?」

さっき左手でもメモを取っていたことを聞かれる。

「うん、字を書くのは右でって。でももともと左利きだから書ける」

「俺さ、何聞けばいいか次はちゃんと考えてくる。向こうからもっと話すかと思ってたら、わけわかんないからな」

「聞きたいことあるの?」

「まあいろいろ」と言ってから、美雨を見る。

「怖くないって。変なことになったら俺がその鳥もらってやるよ」

冗談かわかりかねるその発言に急いで答えた。

「ダメ。リトは私の大事なインコなんだから」

「懐かないのに?かわいくなんかないだろ」

「そんなことない。思い通りにならなくったって大事だよ」

はっきりと言いながら、美雨は心ではそんなにきっぱりした気持ちを持っていなかった。


いつまで、リトを可愛がれるだろう。本当にかわいいと大事だと思ってるのかな。期待に全く沿わず、よくわからない方向に変わり始めてしまったこの子を。

期待をするなとリトは言った。期待することをやめたら、羽鳥にあげてもいいと思うようになる?

期待してうるさく構われないほうが、リトも幸せなんだろうか。