美雨はこの話を誰かとしたことはない。家族内でさえタブーだった。ママは3回の試験全て不合格の美雨に「失敗したって諦めなければいいのよ」と固い笑顔で朗らかに言った。
パパの姉妹の理穂おばちゃんと嘉穂ちゃん、その前にはおばあちゃんが通った。そして今は従姉妹の理恵ちゃん。
親戚のみんなが通う伝統ある私立女子校には、若干名ではあるが高校での募集もある。ママはそのことを言っているんだろう。
美雨はそのために今も勉強している。小学校のときと同じように、まじめに、着実に。今度こそ失敗しないように。
しばらく黙り込んだ後、こちらに目を向けることなく羽鳥が話しかけてくる。
「中園だったら、あの女子校ぐらい受かりそうだと思ってたけど」
「胃腸炎になったりで、全然ダメだったの。羽鳥はなんで?」
「俺は落ちたんだよ、それだけ。親が揉めてさ、受かりそうもないのに無理やり最難関一発狙い」
「ひとつだけ??」
驚きのあまり美雨の声が裏返った。最難関の倍率は2倍以上だ。どんなに頭がよくたって落ちる子はいる。その子たちが受ける第二志望だって、十二分に偏差値は高いのだ。ひとつ落ちただけで公立中だなんて、もったいない。


