委員長選出について先生が話し始めると、沙織がすっと手を挙げた。

「あれ、萩原さん。やってくれるの? 経験者いるのは助かるわ」

「私じゃなく 中園さんがいいんじゃないかと思って。今年もビブリオバトルやるんですよね?」

美雨ににっこりと沙織が笑いかける。これはどういうことだろう。仲直りの歩み寄り?それとも沙織の仕返し?

「そうね、中園さんでも助かるね。どう?やってみる?」

「でも、私よりも」

言い出したところを沙織が横目でちらりと見る。反射的に断ろうとしていた美雨は思い直して言った。

「沙織が一緒にやってくれるならやりたいです」

「いいじゃん、萩原さん副委員長で2人でやれば最強だよ」

面倒事を避けたそうな男子が朗らかに言う。

「そう。他にやりたい人いない? だったら決まりでいいかな? じゃ、前出てきて進めてくれる?」

早速呼ばれてしまい、緊張する間もなく美雨は前方に移動した。

「3年の中園美雨です。よろしくお願いします」

「去年やったバトルの発案者だからね、みんなも何かやりたいことあったら相談してみなさいね」

と先生が軽く紹介する。

「同じく萩原沙織です。美雨とは親友だと思ってるので頑張ります」

「いいね、3年生でまとめてってね」

生徒の交友関係にはさほど関心のなさそうな町村先生は気楽そうに笑った。