羽鳥のうちで起こったことについては全く整理がつかなかったが、ノートに何も書き残さないのも美雨の性格では落ち着かなかった。

羽鳥とリトのやりとりに続いて、美雨が見た幻覚的な映像。リトに向かって叫んだあたりは、気持ちが昂ぶってよく覚えていないこともあり書けなかった。

このことはもう、考えるのをやめよう。それより沙織に謝らなくては。



放課後、教室を先に出た沙織を追いかけて行くと、何も言わないうちに「先に行っていいよ」と他の子を促して、沙織は誰もいない多目的エリアまで美雨の先に立って歩いて行った。

振り返ったところで、美雨からとにかく謝る。

「ごめんなさい」

それまで無表情だった沙織の目に怒りの色が浮かんだ。

「何が? こっそり付き合ってたことについて?」

「付き合ってはないけど、話があって時々会ってたこと隠してた」

変な言い訳はしないほうがいいと思った。リトのことなど関係ない。

羽鳥に会っていたことを隠していた。沙織が好きな人と2人で会っていた。