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竜樹さんとの距離も良い所まで詰めていた私の元へ、哀しい現実は突然突き刺さった。
現場は学校内、時間はお昼休みにて。
「ねぇ茜聞いた!?
例の先輩、元カノと復縁したらしい……!」
「……っえ……?」
竜樹さんが……?
元カノと……?
復縁……?
「ちょ、ちょ、ちょ!
菜穂それどういう……っ」
「先輩と仲の良い人から聞いちゃってさ……。
茜には……一応言った方がいいのかなって……」
ごめん! と菜穂は申し訳なさそうな顔をして手を合わせ謝ってくれる。
菜穂には竜樹さんと共通の友人がいた。
恐らくその人から聞いたのだろう。
「そ、そんな……
菜穂が謝ることじゃないって、ね?
それにさ……っ!
元々両想いになりたいってそこまで思ってた訳じゃないし……っ?
てかあたしじゃムリムリ……!」
その真実を知った時、大きな衝撃が鼓動を飲み込んでいく。
息をすることが……こんなにも苦しいなんて……。
分かってたことなのに……。
こんな私が竜樹さんの彼女になんてなれっこないって……。
脆い自分が顔を覗かせないように矢継ぎ早に言葉を紡ぐ。
不自然過ぎるって……自分自身でもよく分かった。
「……茜……っ」
「ま、まぁ……竜樹さんがそれで幸せになれるなら……
あたしは……すごく嬉しい……!」
嬉しい……?
本当はそんな訳ない。
身の程知らずだって分かっていても嫌だった。
こんな感情を……抱く予定じゃなかったのに……。
「……あとね……もう一つ言うと……先輩の彼女の……」
「コルァ! 榊原ァー!
またお前は机の中に私物入れっぱなしで帰ってただろーっ!」
「……うげ!
中西ィィィィ……!」
「あっ、あれ……菜穂っ!」
あれよあれよと言う間に教諭に連れていかれる菜穂。
……ったく、また机に物入れたまま帰ったのー?
捕まった相手が話の長いあの先生となればお昼休み終わるまでお説教で帰ってこないパターンだ……。
「……てか菜穂……何を言いかけてたんだろ?」
人の運命というものは……
私達では計り知れないほどに巧妙に仕組まれている。
菜穂が言いかけていたことを私は彼女が戻ってきても気に留めていなくてそのまま忘れてしまっていた。
今でも心底思う。
菜穂の口からあの言葉の続きを聞かなくて良かったと。
いつかは知る現実でありながらその言葉を竜樹さんの口から聞けたことで……
私は竜樹さんとのサヨナラに一歩近付くことが出来たから…────────



