声になんて出来ない 好きだなんて…言えない


高鳴った心臓は治まることはなかった。
ずっとドキドキしたまま私は部活をしていた。
トランペットのマウスピースに口をつけ吹き続けた。隣では先輩も同じようにトランペットを吹いていた。その姿はとても綺麗で目が離せれなかった。窓から入る夕焼けの光に照らされて楽譜の通りに指を動かし吹き続けるその姿は私しか知らない。

その綺麗な姿を見てまた、私の心は高鳴った。そして、自分しか知らないことがとても嬉しかった。

見つめすぎたせいで、先輩の視線が楽譜から私にうつった。

「どうした?そんなに俺がかっこよかった?」
悪戯っ子のようなその笑顔で私に言った。

「かっこいいですよ いつも先輩は でも、彼女いる人を好きにはなりませんよ」

精一杯の答えだった。そして、私は嘘をついた。好きなのに...好きなのに...好きにならないと。私は嘘をついた。