晴だけの海

「なにがあった、海」



「だからなんにも」



「なんにもなきゃ、そんな制服は濡れないし、絵の具もこんなふうにならない」




「あっ…」




晴が隣に座る




「みんな絵の具ビショビショじゃん、けど中身には影響ないな。」



「…………」




「大事に使ってたんだな」




言葉がいきなりふわっとして、これはダメだと思った




泣いたら負けだ



泣くな泣くな




とか言って止まるもんでもなく





口をぎゅっと閉じて我慢してても目からはぼたぼたと涙が流れてしまう





それをみた晴は一瞬ギョッとしたけど、すぐに優しい顔になった





俯いてたら、何か暖かいものに包まれたような感覚になる



ん?見上げると、晴の肩が目の前に




抱きしめられてるのか






そうなるとやっぱり我慢ができなくなって、



うわあああんと大泣き





ああああああ





お父さんが最後にくれた画材セット





ううう、こんなになっちゃったよ