「……あの人が……?似てないですよ」
不満げに洩らした声に、小馬鹿にしたようにふっと口を緩めた。
「似てるわよ。性格はおそらく母親譲りでしょうけどね。目元と耳の形がそっくりよ」
ちゃんと相手を見なさいよ、と笑われ、八代は耳を赤くする。
「……ああ。話がそれちゃった」
思い出したというように目を瞬かせた。
「……で、あなたの悩みというのは?まさかそのクビになったのを愚痴りに来た訳じゃないでしょう」
目つきをかえ、八代に向きなおる。
「……あの、俺に、なにか憑いてますよね」
八代は目をそらしながら言った。
「……何故そう思うの?」 
「思ったんじゃない。わかるんです……。あなたなら、木戸さんなら、わかるんじゃないですか」
琴音を試すような目でを見る。
「……へぇ。あなたも視えるわけ」
面白いものを見る目つきで口角を曲げる。
「ええ。あなたの言うように、憑かれてるわよ」
笑みを崩さず両手を顔の前で組んだ。
 わかっていたのだが、冷たい汗が背中をつたう。思わずぎゅっと拳を握る。
 その様子に、くすっと笑みをこぼし
「こわいの」
からかうように言った。
「……なんですか、それ。別に怖がってないです」
ふい、とそっぽを向く八代に、ふぅんと笑みを滲ませながら残りの珈琲を煽った。