二人だけの秘密

僕は自動販売機を見て、そう思った。

真ん中に座っているスキンヘッドの男性客は、アイコスを吸っている。紙巻きタバコと違って、煙や臭いが少ない。つまり、非喫煙者にとって害が少ない。白髪頭の老人客は、雑誌をペラペラとめくっている。

「………」

僕はサイフから小銭を取り出し、自動販売機のコイン投入口に120円を入れた。それと同時に、押しボタンスイッチが緑色に光る。

僕は、缶の飲料水を人差し指で押した。ガコン!という音が鳴り、自動販売機の取り出し口に冷えた飲料水が落ちた。プルトップを開け、飲料水を口に入れる。カラカラだった口の中に冷えたジュースが駆け抜け、喉が一瞬で潤う。

「ふぅ」

僕は、大きく息を吐いた。

「先客のお二人様、どうぞ」

そのとき、クリーム色のカーテンが開いた。男性従業員が中に入って来て、僕以外の二人の客を先に案内する。

二人は男性従業員に案内され、待合室から出た。

「お客様は、少々お待ち下さい」

男性従業員にそう言われ、僕は黒いソファーで待機した。

左手につけてある、デジタル式腕時計に視線を落とす。時間は、3時7分を表していた。







「お客様、どうぞ」

あれから20分ぐらい待たされて、ようやく僕が呼ばれた。店長の松岡さんはニコニコと笑顔の仮面を顔に貼り付け、僕に気の利いた接客対応を見せる。

「………」

待合室を出た僕は、階段をのぼるように言われた。そして、一番手前の扉を開くように言われた。僕は指示通り階段をのぼり、一番手前の扉を開いた。