二人だけの秘密

「ウッ」

僕の体がくの字に曲がり、そのまま後方に倒れこんだ。倒れ込んだ方向に自分の机があり、それに背中が激突する。
ガシャンという大きな音が教室中に響き渡り、机が倒れた。それと同時に、僕も倒れた。

机の上に乗っていたチャックの開いていたふでばこの中身が周囲に散乱し、僕の足元に鋼色の物が金属音を立てて落ちた。刃先が冷たく、金属製の物だ。

ーーーーーーハサミだ。

僕はこっそりとハサミの持ち手をぎゅっと握りしめ、不良生徒を睨んだ。

「ははは」

「弱!」

「てか、やり返せよ!」

周囲からの煽りは続いており、僕には全然楽しくない男女の笑い声が教室中に溶け合う。

ーーーーーーハサミを投げてやる。これだけ僕のことをいじめてるんだから、これぐらいのことをしたって全然問題ないはずだ。

ハサミを握る力に、さらに力が加わる。それと同時に、僕の右手が徐々に震える。

怒りで震えているのか恐怖で震えているのか分からなかったが、こいつだけは許せなかった。

「こんな物をいつまでも持っていたら、俺までお前みたいになりそうやわ」

そう言って不良生徒は、僕の頭にめがけて大切な療育手帳を投げた。

「………」

僕の頭に療育手帳がポンと当たり、冴えない自分の顔写真が写ってある状態でその場に落ちた。自分の顔写真に視線を落とすと、いつも以上に悲しそうに見えた。

「栗原、早く病院でも行った……」

「うわぁぁぁぁ」

なにか言いかけた不良生徒の言葉を遮って、僕は握っていたハサミを投げた。

ーーーーーーブスリーーーーーー。