二人だけの秘密


ーーーーーーガラガラ。

「席に着いて」

そのとき、また教室のドアが開いた。

教室内に女性の低い声が聞こえ、生徒たちは慌てて自分の席に座る。

「………」

僕も汚れたカッターシャツをパンパンと両手で払い、自分の席に座る。

「おはようございます。今日から、このクラスの担当を務めさせていただきます、佐藤順子と申します。今日から、新しく高校生活が始まります。みなさんの顔と名前を早く覚え、楽しいクラスにしたいと思っております」

佐藤順子というメガネをかけた、ふくよかな女性教師。年齢は五十代ぐらいだろうか、そのベテランの女性教師が黒板に自分の名前を書いて簡単に自己紹介をした。

「では、出席を取っていきます」

佐藤先生が左手で出席簿をつかみ、中身を開いた。そして、名前を呼んでいく。

「浅井雪さん」

「はい」

「井川夏君」

「はい」

「井上弘毅君」

「はい」

次々に名前が呼ばれ、生徒たちは返事をしていく。そして、あとひとり呼ばれたら僕が名前を呼ばれる順番まで回ってきた。



「木村裕也君」

「………」

「木村裕也君」

佐藤先生が、もう一度彼の名前を呼んだ。

「………」

「木村裕也君は、お休みですか?分かりました」

彼が休みのを確認して、佐藤先生が出席簿にボールペンで欠席と書いた。

「栗原未来君」

「はい」

「佐伯美希さん」

「………」

「佐伯美希さん」

「は、はい」

数秒遅れて彼女の驚いた声が、真後ろから聞こえた。彼女のフルネームを耳にしただけで、自分の体温が急上昇する。

「自分の名前を呼ばれたら、一回で返事してください」

「………はい」

佐藤先生がそう指摘すると、美希は、小さな声で返事した。

次々に名前が呼ばれ、そしてあっという間にクラス全員の名前が呼ばれた。

「今日はみんなも知っている通り、入学式なので午前中で終了です。なので今日は、学校内のルール説明と交通手段の説明をします。それから、全員で校長先生のあいさつを聞きに行きます。そして本日は、終了という形になっています」

佐藤先生が学校の説明をしている最中、寝ている生徒が大半を占めていた。