「未来、夏休みの宿題やったか?」

裕也が、机の上にカバンを置きながら聞いてきた。

「ああ、なんとかな」

僕は大きなあくびを一回して、答えた。

母親に言われた日は宿題はまだ半分もできてなかったが、その次の日から徹夜をしてなんとか宿題を終わらせた。そのせいで、朝から眠い。

「マジかよ!」

それを聞いた裕也が、驚きの声を上げた。

「俺、夏休み遊んでばっかりだったし、宿題半分しかやってないんだ。見せてくれ、未来」

裕也は片目を閉じ、「頼む」と言って両手を合わせた。

「別にいいけど、間違いも多いぞ。僕も、最後の方は適当に書いたから」

そう言って僕は、指定された黒い学生カバンから宿題用紙を取り出した。それを、裕也に渡した。

「ありがとう」

やってないという数学と国語の宿題用紙を僕から受け取り、裕也は慌てて写し始めた。

「うわー、誰か宿題写させてくれ!」

「マジで、ヤバイ!」

「宿題見せてくれたら、ジュースおごる。だから、頼む」

「留年だけは、マジで地獄。ヤバイ、マジで」

周りからも、裕也と同じような生徒がたくさん見られた。そこに、一つだけ空いている席があった。

「美希さん………」

彼女が未だに姿を見せないことに、僕の心がざわざわする。