二人だけの秘密

「今日は、ありがとうございました。気を付けてね」

個室から出て、かなさんがていねいに見送る。

「最後に、聞いていい?」

僕は、低いトーンで訊いた。

「いいんですけど、なんですか?」

かなさんは口角を上げて笑って、僕の頬を人差し指で優しく突いた。

「僕の好きな人も、君と同じ風俗の仕事をしているんだ。そんな人を好きになるなんて僕、おかしいかな?」

複雑そうな表情で答えた僕の目には、うっすらと涙が溜まっていた。

「えっ!そんなの全然、おかしくないよ。むしろ同じ立場の目線で言うけど、私はすごく嬉しいよ」

仕事で見せる作り笑顔とは思えないほど、かなさんはきれいな笑顔で答えた。

「………」

僕は、その言葉が嘘でも嬉しかった。