二人だけの秘密

「彼氏は私にこれ以上迷惑かけたくなかったのが理由で、自分から命を断ちました」

「………」

また、聞かなかったらよかったと、僕は思った。

左胸に画鋲がいくつも刺さっているような感覚に襲われ、僕は顔をゆがめた。

「彼が書き残した手紙が、病院のベッドの上に置かれていました」

彼氏のことを思い出したのか、左手薬指にはめている指輪を見て、かなさんはうっとりした表情を浮かべた。

「手紙の文は、こう書かれていました」

【事故のせいで、俺の夢は叶いそうにもない。これ以上、君に迷惑かけたくない。君は、君の人生を歩んでください。今まで、ありがとう。そして、幸せに出来なくてごめん】

手紙の文を思い出したのか、かなさんの瞳に涙が溢れた。

「………」

それを聞いて、僕の鼻がツーンとした。それと同時に悪い質問をしたと、心から思った。

「父親のことは多少恨んでいます。が、父親がしなかったら、きっと私が復讐したと思います。だから、父の気持ちは分かります。やったことは、許されないことですが………」

「そうですか」

僕は、乾いた声で言った。