二人だけの秘密

「そして私は休んでいる間に、産婦人科で妊娠した子供を堕ろしました」

かなさんはもの寂しげな表情を浮かべながら、自分の腹部の辺りを触った。

「………」

今の彼女の姿を見た僕は、胸が締め付けられる思いになった。きっと彼女が、僕の大好きな美希さんと同じ環境に近い人だからだろう。

ーーーーーー男子大学生に強姦さえされなかったら、彼女は今も幸せだったのに…………

僕は、下唇を強く噛みしめた。

「でも、その間に私の彼氏は亡くなり、父親は男子大学生を刺しました」

かなさんは訴えるような瞳で、そんなことを言った。

「えっ!」

それを聞いた僕は、目を丸くして驚いた。

「ど、どうして、彼氏さんは死んだのですか?どんな理由があっても、人を殺害した父親には恨みはないんですか?」

そして思わず、僕の口がそんなことを訊いた。

「………」

その質問はまずかったのか、数秒間、かなさんに睨まれた。

「す、すいま………」