「早く帰らなきゃっ!」
恵ちゃんに腕を引かれて寮の門をくぐる。
この高校の数少ない人たちは寮に住んでて、奏音と結衣と恵もその中数少ない寮生。
「…あっ!!
アンタ達っ?どこほっつき歩いてたんだい!」
…っうげ!!
「イヤ〜、コイツがいけないんですよ」
恵ちゃんはそう言って、あたしの背中をグイグイ押して前につき出す。
「…カノン?」
その瞳は、何だか…
「お、おば…さん、
あたし…、失神、…倒れ…」
「ホラッ、…何で恵は奏音を怖がらせることばかり…っ」
呆れたようにそう言うと、奏音を自分の元に引き寄せ、頭を優しく撫でる。
「可哀想に、ヨシヨシ…
奏音は文化祭でライブを恵に無理矢理連れて行かれて、…失神して倒れたんです
大音量に驚いてしまって…」
「あらあら…っ
奏音は、本当に面白い子だねぇ」
おばさんは笑って奏音の頬っぺたを親指と人差し指で潰すと、タコのような口にさせる。
「夕食、ラップしてあるから食べなっ!
直美にもちゃんと言ってきなよ〜」
そう言うとそのままどっかに行ってしまった。
「うわー、直美先輩、無理!」
直美先輩と言うのはこの寮の寮長で、
三年生の先輩。
まぁ、気が強い人で奏音もよく苛められる。
「恵、あなた一人で行ってきたら?
…まずは夕食を食べたいし」
シラッとした感じの表情で言うと、
そのまま椅子に座る結衣。
「…あ、あたしも食べちゃいます!
恵ちゃん、お願い、しますね…?」
そう言って、
椅子に座ると、おかずに掛かったラップを取る。
「わ…、分かったよ!どーせあたしの責任ですよっ
…冷める前に食べよ」
続いて恵も椅子に座ると、
思いきりに二人をキッと睨み付けた。

