「…ただいまです、」
キッチンにいるおばさんにそう言うと、そのまま冷蔵庫の中に京香ってきたケーキを箱ごと入れた。
すると料理を作っていたおばさんがこっちを向いて、『今日はどうしたの?』って聞くから、すぐに結衣ちゃんとかと一緒じゃないの?ってそういう意味なんだなって分かった。
「今日は…、違うんです」
ちょっとばかり、元気がない奏音。
「そうかい、…あんまり溜め込むのはいけないよ?」
すると再び野菜を切り始めた。
「…ありがとう、です。」
そのまま二階に上がって自分の部屋に向かう。
…はぁ、
やっぱり溜め息が出てしまいます…
一人の部屋の中に居ると、どうも息苦しくて。
棚に置いてあるウーたん人形を見つめて、また悲しい気持ちになってしまう。
窓のカーテンを開けて、ボーっと外の景色を眺めてみる。…あれ、今日は満月だったんですね、まん丸のお月さまです。綺麗ですね…
そんなことを思っていると、
―プルルル…プルルル…プルルル
「誰でしょう…?」
部屋にある電話が鳴って、誰だろうと思いながら電話にでてみる。
こんな時間帯に、…誰でしょう?
「…もしもし、」
『あ、桜木?』
その電話の声で少し奏音の不思議な気持ちも晴れて、
「隼人くん…っ?」

