「何これ、」

まだ茫然とした表情で奏音の持っているバットくんとやらを指差す。



…何これって、

バットくんを知らない人がいるなんて、…驚きです。



「…いつも町のみんなに迷惑ばっかり掛けるんですけどね…?

本当は優しいい心の持ち主なんです、ただちょっと素直になれないだけで、」


「ふーん…」


「先輩に似てるんです!」

奏音がそう言って笑うと、珍しく蓮二も少しだけ笑う。



「…変な奴、

仕方ねぇから…、貰っといてやるよっ」


やっぱり素直じゃない蓮二くん。

奏音の手に持たれていた“バットくん”人形のストラップを手に取る。



「…あっ!

先輩って携帯電話持ってますか?」


「…持ってるけど、?」


「じゃぁ、出してみて下さいっ!」



勢い良く詰め寄って蓮二の携帯を半ば強制的に奪い取ると、
さっき蓮二の手に渡ったバットくん人形をまたもやサッと奪い取った。


「えーと…、


ホラ、出来ましたぁ!」


「テンメェ…、勝手に付けやがったな…」


「はいっ」


奏音はそう言うとケラケラと笑って、それと同じように蓮二もケラケラと笑った。




…そしてこの幸せな気持ちと、

自分の大切なものを蓮二にあげた気持ちが一体どういうものなのか…



奏音はまだ知らない。