「…うっわぁ、先こされたぁ!!」

「あらあら、…こんなにたくさん人がいたら、お目当ての山瀬先輩も見えないわね」


ちょっと嫌味っぽい感じで結衣は言うと、隣にいる奏音に視線をずらした。




「…奏音、…戻る?」

結衣は奏音のお世話役、って感じ。


「帰りた…「だーっ!!」」

きっと『帰りたい』と、そう言いたかったんだろうけど、


見事にそれは恵に阻止される。



「…ダメ!

せっかくなんだから…、ね?」


手を合わせ眉毛を八の字にしてそう言う恵に、



「…んーっ、はい…っ」

ちょっと不服そうな表情だけど、コクンと縦に頷いて奏音は言うと、結衣の顔を見る。


「やったーっ!!

…よっし!いっくで~!」



「…あっ?!」

「…恵っ、」


ハイテンションの恵に腕を掴まれて奏音と結衣はズルズルとステージのすぐ前の方まで引きずられていく。



「恵ちゃんっ!!…ちょっといくらなんでもイタズラが過ぎんじゃないですかっ?」


…イタズラが過ぎる?

相変わらず面白い発言をする奏音ちゃん。



「…もう私は諦めるわ、」

小さくハァっとため息をつきながら結衣は言うとそのまま素直にされるがまま恵に引かれていく。



「そうそうっ!!

…奏音ももう少し結衣を見習うこと!」


「言っている意味が分かりませんっ」