先輩の特徴とも言うべき、赤い髪の毛。


指先に触れた先輩の髪。



「…んっ、…」

っっ!!


急にした先輩の声にハッとしてあたしは即座に手を引っ込めて自分の胸に寄せた。

妙に速くなるあたしの心臓。


「寝て…ますか?」

不安になって声を掛けてみる。


けど…応答はない。すると急に少しばかりの安心感に包まれるような気分になった。


再び先輩の寝顔をジッと見つめる。
綺麗な顔立ちをされていますよね…本当に。

憎まれ口と言いますか、キツイことや酷いことも言いますけど…本当は優しい心の持ち主なんですよね。


前に蓮先輩にあげた。バットくん。

何だか本当その通りの人じゃないですか…っ。


そう思うと顔が緩んで、クスクスと一人で笑ってしまいます。



「蓮先輩…」

名前を呼んでみて、


また速まるあたしの鼓動。



「…先輩のこと、大好きなんですよ?あたし」


目を閉じている先輩に、こんなことを言ったって意味なんてないのに。

この時は何故かそんな言葉を口にしたことで、少しの幸せを感じることが出来て…



きっとあたしがこの想いを再び口にすることは。

無いんじゃないかな?


なんて思います。


だってあたしが…あたしが言えるわけないですもの。


複雑な気持ちを抱えながらも、あたしはまたお布団の中に入り目を閉じた。

良い夢が見られることを願って。



そして…

そんな奏音の寝息が聞こえた頃。


チラリと薄目を開けて彼女を見る人が一人…