奏音と蓮二の距離は縮まっても、無言の会話が続くばかり…
周りはそれを心配そうに、
でもどこか面白そうに見ているに違いない。
「…つか!
先にお前がしろよ、自己紹介…っ」
突然そんなことを言い出したからビクッと奏音は動く、
「…あ、…桜木奏音、です。
お人形とか…、甘いものとか可愛いものが好きです」
…言い切りましたっ!
心の中でもガッツポーズをする。
しかし、
「あんさー…、ソレ
なんなの?」
あたしの自己紹介に触れることもなく…、
ソレ、…とは一体なんでしょうか?
その姫山先輩が指差すものを見る。
…あたしの、パジャマですか?
「…これが、何か?」
キョトンとした顔で首を傾げる奏音。
「何でパジャマにレース付いてんだよ!
つか、なんだよそのでっけぇウサギ…っ!」
後ずさりしながら蓮二は、
かなりとてつもなくこの世の終わりのような表情をする。
「あ、これは…
あたしの好きなキャラクターのウサギのウーたんですっ」
にんまりと微笑んで幸せそうに奏音はいう、
その周りにはまるでたくさんの花と蝶々が飛んでるような雰囲気。
「…コイツ、ヤバいんじゃねぇの?
頭ん中…」
「ヤバくないですよ!」
つかさず反論。
「ヤバいだろーが!!」
「そんなことありません!」
「そーゆうの悪趣味って…「蓮二、自己紹介…」」
何故か言い合いになっている奏音達が止まる。
さっきまでずっと黙っていた山瀬先輩が口を開くと、姫山先輩にそう言った。
「ったくよ…
…姫山蓮二、…甘いものとか人形とか可愛いものが“大嫌い”だ」
…この人、子供です。
いや、その前に悪魔です!
「俺は山瀬徹、同じく二年」
するとあっという間に山瀬先輩の自己紹介が終わってしまった。
「…あ、私は奏音と同じ一年の、一条結衣です。」
上品に言うと、ペコリと小さく会釈をした。

