「奏音は可愛いの」
さっきまでは全くと言っていいほど会話に参加していなかった結衣ちゃんが急に口を開く。
それと同時に読んでいたらしき本にしおりのような物を挟むと、
ニッコリと優しい笑顔をあたしに向けてくれました。
「…でたよ、結衣の“ひいき目”」
「そんなんじゃないわよ、本当のことを言っているだけよ?」
あ、…二人の間に。火花が・・・
「と、とりあえず…、その迷惑を掛けてしまって」
違う。
この子はモノの捕らえ方を間違ってはいないだろうか…?
「それよかさぁ~、
…葛木先輩、また違う女と一緒に歩いてた!」
ハート型のクッションを今度はあたしに投げ付けると、またもや不満気にそう言う。
そう言えば、
葛木先輩は女性関係があまりよろしくは無いと前に恵ちゃんが言っていましたよね?
本当にそうなんだ…、
「それでどうするの?…恵は、」
あまり様子も変わらないまま結衣は本のしおりを外すと、再び続きから読み出した。
最近、結衣ちゃんは推理物にハマっているとか何だとか言っていたような気がしますけど…、推理ものってどういったものなんでしょうか。
もしかしたら…
殺人とか、ジェーソンですかっ!?
「でも…、好きな人が他の人といるの見るのは辛いよなぁ…」
そうですよね…、
あたしだって蓮先輩が他の女性と一緒にいたりしたら、ましてやそれを見てしまったら、…哀しくて立ち直れません。
それは大袈裟ではないか?

