【短】恋がはじまるそのときは、




その理由に気がついたのは、わたしを抱きとめてくれた誰かの存在に気づいたから。


誰か、なんて言わなくても分かるんだけど。


シトラス系の香り、それは大好きな人の香り。


「ったく、ドジだなあ」

「ご、ごめんっ」

「みこ、大丈夫か?」


背中から聞こえる声に振り向くと、本当に心配そうな瞳が見えて。


「大丈夫……あ、ありがとう」


震える声でお礼を言えば、優にぃはほっとした顔で笑ったあと。


なぜか、真っ赤になった。